従業員が刑事事件を起こして逮捕されたとき、会社には適切な対応を迫られます。
逮捕されても、必ずしも解雇できるとは限りません。
大事件であれば、世間の評判にも配慮する必要があるでしょう。
今回は従業員が刑事事件を起こしたときに会社に求められる対応を、弁護士が法的な観点から解説します。
このページの目次
1.逮捕されても解雇できるとは限らない
従業員が逮捕されたら「解雇した方が良いかもしれない」と考える方もおられます。
しかし逮捕されたからといって、解雇できるわけではありません。
そもそも逮捕されただけでは「有罪」が確定していません。無罪になる可能性があります。
無罪なのに解雇したら、明らかに不当解雇となるでしょう。
また有罪であっても、業務と関係のない軽微な犯罪であれば、解雇理由が認められません。
やはり不当解雇となる可能性があります。
従業員が逮捕されたときには、状況に応じた判断と対応が必要です。
2.会社への背信行為の場合
従業員が会社のお金や商品を横領した場合など、会社に対する背信行為を行ったケースを考えてみましょう。
この場合には、従業員には「業務上横領罪」が成立し、会社が被害者となります。
横領事件の場合、解雇が有効になるケースがほとんどです。
また従業員に対しては、横領されて発生した損害の賠償請求が可能となります。
3.プライベートな犯罪の場合
暴行や痴漢などのプライベートな刑事事件の場合、判断が難しくなります。
重大犯罪で会社の信用を失墜させるような犯罪行為であれば、解雇できる可能性もあります。
一方、軽微な暴行事件や盗撮の初犯などであれば、解雇までは認められにくいでしょう。
停職処分や降格などの他の懲戒処分が相当となるケースもあります。
4.交通事故
交通事故を起こして刑事事件になってしまう例が少なくありません。
この場合、解雇はかなり難しくなるでしょう。ただし運送業やタクシー会社の従業員が悪質な交通事故を起こした場合などには、解雇できる可能性もあります。
5.マスコミ対応
従業員の刑事事件がマスコミ報道されて世間の注目を浴びると、会社の評判に影響が及びます。イメージ低下を最小限に抑えるため、慎重に対応しましょう。
記者会見での発言だけではなく、従業員にも余計なコメントをしないようクギをさしておく必要があります。
6.起訴休職
従業員が逮捕されると、有罪か無罪か確定するまで時間がかかります。
その場合「起訴休職制度」を作っておくと、起訴後判決の確定までの期間、休職させることができます。起訴休職中は賃金を払う必要がありません。
あらかじめ、就業規則に定めておきましょう。
従業員が逮捕されて刑事事件になると、企業にも大きな影響が及びます。お困りの際には弁護士までご相談ください。